私が初めて貴方に逢ったとき、すでに貴方は彼女と一緒にいましたね。
あの時は、思いもしませんでした。
貴方のために、こんなに苦しむなんて。
今でも、まだ信じられないのです。自分に、こんな心があったなんて。
私はローラントの王女。行方不明になった弟を、そして滅亡した国を再興するために旅に出たのです。それが達成されるまでは、他のことに目を向けることなんてないはずだった。
それなのに。
ずっと一緒にいるうちに、貴方から目が離せなくなった。
私の目が追いかけていることなど、貴方は気付いていないのでしょうね、デュラン?
敵と戦闘になったときは、私はすぐに前に出ます。それが叶わなければ、後ろを向いて、二人の後方を守ります。
だって、そうでしょう?
二人の仲のいい姿を、喧嘩する姿を、後から見ているのは、辛いんです。
貴方がクラスチェンジで光を選んだとき、私は迷わず闇に進むことを決めました。
貴方は私たちを―――あるいは彼女を守り、癒すために光を選んだ。
だから私は―――常に貴方の前にいて、決して誰にも傷付けられないように、護るために、闇の力を欲したのです。
それが私の望みです。
―――そして、もうひとつの望み。
私が無茶をして、傷を追うのもかまわずに戦おうとするとき、貴方はいつも声をかけてくれますね。
「リース、無茶をするな」って。
そうして、いつも隣に並ぼうとしてくれるのです。
その言葉だけは、彼女ではない、私にだけ向けられる言葉。
その言葉を聞きたいがために、私は貴方の前に立って戦うのです。
でも、決して告げるつもりはありません。
聖剣を抜けるただ一人の勇者である彼女―――アンジェラが、マナの剣を手に入れ、全てが終わるまでは。―――いいえ、全てが終わっても。
この時間を、壊したくないから。
だから、少しでも一緒にいられる時間が長く続くようにと、祈りながら。
この想いは、私の心の中だけの、秘め事。
END